5.





お守りを買うなんて口実。
母親が『買ってきなさい』と金をくれたから、じゃあ茅代と一緒に、って思っただけで。

そういうことでもなきゃ受験モード真っ只中の今はなかなか会えないから。
俺も塾だの模擬試験だの家帰っても勉強だので時間取りにくいし、茅代もそのへんですげぇ遠慮して誘ってこないし。

俺は、大事な試合のときだって神様的なものには頼ったりしない。
マネージャーが試合に出る部員一人一人に作ってくれた必勝祈願のお守りとやらも、
未だに袋に入ったまま、カバンの奥底に沈んでるはず。
もしかしたら今日買ったお守りもそんな扱いになるかもしれない。

でも、茅代が真剣に「買いたい」と言ったのが何かもうすげー、可愛くて。
なんでこんな俺に真剣に思いを寄せてくれてるのかはちっとも分からないけれど
ただ茅代の気持ちを受け止めたいって、素直に思う。


地元で1番有名な神社。当然、人も多い。
明るい朱色に染められた鳥居をくぐり、軽い行列が出来ている最後尾に二人で並ぶ。
ちらほらと着飾った人の姿も見えるけど、大半は分厚いコートとマフラーに身を包み、静かに順番を待っているようだ。

「寒くない?」
「・・・はい」

・・・ったく。
繋いだ手ごとコートのポケットの中に沈め、指先だけを動かして軽く擦る。

「正月くらい、正直になるように」
「・・・・はい」

何で分かるの?って顔すんなよ。
さっきから繋いでる手がえらく冷たいんだから、すぐ分かるっつーの。

「お祈りしたらすぐ店入ろう」
「はい」

とはいえ。
こんな簡単なことで嬉しそうにほこほこ笑われると余計に可愛くて仕方なくなる。
あ〜、超癒される・・・。

「先輩っ!!」

・・・せっかくいい気分だったのに。今度は誰が邪魔を?

肩を叩かれたので仕方なく、あからさまに不機嫌な顔のまま振り向くと、何故かそこにも不機嫌な顔の男が一人。
誰だ?いや、どっか見覚えがある。えぇっと・・・こいつ、確か。

「渡瀬くん・・・、あけましておめでとう」

茅代が驚いたように、それでもバカ丁寧に挨拶してる。
え、知り合い・・・?って。

(っ、あーーーっ!そうだっ!)

一瞬悩んだだけで、すぐに記憶が繋がった。
こいつ、前に茅代とデートしてたヤツだ!

と思うと同時に、そいつの隣に女の子が立っているのに気がついた。

「あれ、亜矢ちゃん・・・?」
「青木先輩、あけましておめでとうございます!偶然ですね、デートですか?」
「あぁ・・・そっちも?」
「はいっ!」

ビックリしたぁ・・・。
そうか、声かけて来たのは亜矢ちゃんのほうか。
だよなぁ。今も俺を好意的とは言えない目で見てるこいつが声かけてくるはずないもんな。

「茅代、この子ラグビー部のマネージャーしてる子なんだ」
「・・・あ、そうなんですか、はじめまして」

ぽかん、と一瞬間があってから、じっくりと丁寧に頭を下げて挨拶をする茅代。

「あ、ど、どうもぉ」

茅代にとっては、これが普通なんだけど。
テンポを一瞬崩されつつも、亜矢ちゃんはすぐにまた明るく話し始めた。

「やだなー、たまにそっちのクラス遊びに行ってるから初めましてじゃないんだけど?」
「・・・え。ごめんなさい、知らなくて・・・」
「ま、話したことないから仕方ないか。ねぇ着物可愛いね!いいなぁ、私も着ればよかったかな〜?」

人見知りゼロでポンポンと話しかけられて、多少戸惑いながらもゆっくりと受け答えをする茅代。
それをどっか嬉しそう〜に眺める・・・

「・・・ちわっす」
「どーも」

この、渡瀬ってヤツ。
何でうちのマネージャーとデートしてるんだ。

俺の視線を感じて仕方なく・・・という感じで挨拶をするコイツは、相変わらずちょっとカッコいい部類の男だ。
茅代に聞いたところによると成績もいいみたいだし、クラスでも女子にモテるほうらしい。
もし茅代が俺に好意をもってくれてなくて対等な立場だったとしたら、見た目だけで間違いなく俺のほうが負ける気がする。
鞍替えして、茅代のこと諦めてくれたってことならいいんだけど。

「…まだ、諦めてないですし」

そう願った俺に気が付いたのか、こちらにだけ聞こえるように言いやがった。
だよなー。
そんな感じ、というか諦めてない光線がばっしばしだもんな。

「んじゃなんでよ?」
「・・・断れなかったんです、めっちゃめちゃしつこくて」

亜矢ちゃんを指差しながら言葉少なに訪ねると、仏頂面で悔しそうに答える。
それちょっと失礼じゃね?
そう思いつつも、正直、亜矢ちゃんが相当プッシュしたってことは容易に想像がついた。

(亜矢ちゃん、欲しいものは手に入れるタイプだからな〜)