やばいだろ。
一緒にいて安心するって、ヤバイだろっっ。
家まで送り届けながら、内心興奮しまくりの俺。
小柄すぎるほど小柄な彼女と並んで歩く。
普通に前見て歩いてたら、視界に入らないほどちっこい。
ぶつかるまで気がつかないはずだ・・・リアル池野めだかだな、これは。
青白かった顔色も普通に戻ってきてるし、ほやほや、とした笑顔を見せてくれるようになったし、
しかもそれまで『笑っちゃいけないのかと思ってて』って気まで使ってくれてたなんて・・・
やばい。くる。つぅか、キタ。
「あっ!あぁ、あの、さ」
「はい」
いつの間にかたどり着いてたらしい彼女の家の前。
立ち止まって「ここ、です。ありがとうございました」とペコリと頭を下げて家に入ろうとしたので慌てて引き止めた。
最近引っ越してきたってわりには・・・築20年はたってそうなコンクリのレンガを積み上げた門。
古そうな引き戸の玄関。
でも所々に花の植木鉢がさりげなく飾ってあって、そんな寂しい印象でもない。
「明日、一緒にガッコ行かない?」
「・・・はぁ」
「なんかちょっと、その・・・。心配、というかさ。わかんねぇじゃん? 脳みそん中どーなってるか」
「・・・だいじょうぶ、ですよ?」
きょん、と小首をかしげて俺を見た。
その上目遣いの表情もなかなか可愛い。つーか、ちっこいから誰にでもそうなんだろうけど。
(んでもそれ、俺だけのにならねぇかな?)
なんて下心丸出しの俺の「1週間くらいは様子見よう!」という必死の説得に折れて
明日から一週間は一緒に行き帰りをする約束をした。
「じゃ、明日8時ごろここに立ってるから」
「はい・・・。今日は、ありがとうございました」
「いえいえ。あ。よかったらケータイの番号とか教えて?」
「・・・持ってないです」
マジっ?????
今どきっ?????
「う〜ん・・・じゃあ、なんかあったとき困るからさ。家の番号でも?」
「あ・・・はい」
彼女がさらさらと答える数字の羅列を携帯に打ち込んだ。
まぁ、こうして送り迎えしてるときに次の約束をすればいいことだし、もし万が一付き合えたら携帯持ってもらうことにしよう。
「んじゃ、今日はゆっくり休んでね。また明日!」
「あ・・・」
なんか言いかけた様子だったけど。
とりあえず明日の約束もできたしまぁいいか〜って思って、俺は学校に戻った。
「うっす」
「お、えっらい堂々と遅刻じゃねぇの」
保健室の先生のとこに報告にいったあと、ちょうど昼休み終わりごろに俺は教室に入った。
クラスメイトで友達の金山が、にやにやと笑みながら何か言いたげに俺に話しかけてくる。
そのニキビ面すらムカムカするが、知らねぇふりして机にどん、とカバンを置いた。
「失恋の痛手で今日は休みかと思ったけど?」
「・・・るせーって」
やっぱ知れ渡ってたか。そりゃそうだよな。
昨日まで彼女だった女は俺の三つ前の席に座ってんだし、このクラスは異常に男女関係なく仲がいいんだ。
グループごとで固まってなくて、ウソみてぇに皆仲良し。
学校祭のときとかめちゃめちゃ楽しかったしすげーいいことだけど、こういうときはマジウザイ。
「ちぃっと仕事してたんだよ」
「仕事?」
「ん〜、玄関で人にぶつかって。そいつ気失って倒れちゃったから病院につきそってた」
「あっりゃ〜、大丈夫だったの?」
「あぁ、異常はないみたいだけど1週間送り迎えする」
「わぉ〜、マメだねぇ。女か?」
「・・・女。1年」
「早いね〜〜〜〜。もうモトカノこと忘れたの?」
「んなわけねーだろっ」
そこだけデカイ声でつっこんでみる。
三つ前の席に座って女友達とくっちゃべってるブレザーの背中がぴくん、と少し動いた気がした。
さっきまで浮かれてた気分がウソみたいに沈んでいく。
座っているから、こっちからはショートボブのすっきりとした襟足と背中だけが見える。
公崎奈保(コウザキナホ)。身長160cm程度でグラビアアイドル並みのボディライン。
顔もなかなか可愛い。クラスが一緒になる前から好みだと思って狙ってた。
クラスメイトなんてやめとけよって言われながらもコクって、成功したときには涙が出そうなほどうれしかった。
・・・・・思ってたよりも本気だったんだけどな・・・・・。
どーしてこうも気持ちが伝わらないのかなぁ。
はぁ、とため息をついた辰則に、金山が「どーじょーするよ」とニマニマしたまま言ってきたので、
そのまま頭を一発はたいて、教室を出てトイレへと逃げ込んだ。
(あ〜、ウゼェ。午後の授業・・・・ふけようかな、もう)