…以下、R18表現があります…
泡風呂に浸かったまま、大和は一人悔しがっていた。
(…反則気味にエロかったぞ。今のは)
生でしてみて盛り上がっちゃったら外に出せばいいかな。
なんて軽く考えていたら大きく潤んだ目に見降ろされ、脳天から思いっきり吹っ飛ばされそうになった…。
理性を失うコンマ2秒手前にどうにか鞠の中から抜け出して、今に至る。
湯船には未だ鞠が抜けた後に残った泡の空洞。その奥に見える立ち上がったままの自分自身がバカなボウフラみたいだ。
(どんだけ鞠に持ってかれてるんだよ俺。情けねぇ・・・)
恋愛の駆け引き、ベッドの上のこと、なにを仕掛けるにしても初体験の鞠に比べたらこちらのほうが経験積んでるから、余裕はあるはず。
なのに時折こうやって未体験ゾーンに引っ張っていかれ無様な自分を晒してしまい、プライドがべっこりヘコむ。
それでいて、その一挙一動にクラクラさせられる。
全部を、俺でいっぱいにしてやりたい。
俺が知ってること全てで、あいつを染めつくしてやりたい。
誰にも…。絶対に、渡したくない。
そしていつも。
自分の中の、もう恋愛と呼んでいいかも分からない黒い感情に突き当たってしまう。
(あー…超、イラつく)
ただ好きなだけでいいはずなのに、大切にしているだけでいいはずなのにどうしてこんなこと考えてるんだろう。
大和は浮かんでいる泡を手で勢いよく叩き飛ばした。
ピンク色のタイルにパシャ!と勢いよく泡が飛び散り、残りが頬に弾け返ってくる。
ゆっくりとそれを手の甲で拭った。
万が一。
もし鞠が、俺との別れを望んだとしても。
俺はきっと頷けない。
それがあいつにとって幸せだって分かってたとしても…俺は、鞠からはもう離れられない。
シャワーで泡を流し、軽く体を洗ってからから出ると鏡の前で鞠が髪を乾かしていた。
ぶかぶかのバスローブを身にまとい、鏡が遠いからかしきりに体を曲げてお尻を突き出し鏡に顔を近づけている。
ろくに体も拭かずに、黙ったままバスタオルだけを手にとって、鞠の後ろを素通りし一旦部屋に戻った。
ベッド脇に用意されてあったコンドームを装着しバスタオルを腰に巻きつける。
それから戻って、鞠の背後の壁に寄りかかるようにして立った。
髪を乾かしているのを、後ろでじっと眺めてみる。
(…大人に、なったよな)
ドライヤーの風で時々見える白いうなじに、誘われる。
最初に見たときだって十分、可愛かったけれど。
その時の少女らしさも残したまま…いや、その部分が逆に淫靡に映るくらい、鞠は出会った頃よりも確実に"女"になっていた。
半分少女で、半分女。
そんなことを考えていると、鞠がドライヤーのスイッチを止めこちらに振り返る。
「大和、ドライヤー使うの?」
「いや…終わったか?」
「うん」
軽く上気した頬に乾かされた髪がさらさらとかかる。
かかった髪をそっとどけて、ただ触れ合うだけのキスをした。
(好きだ…)
「そこに、手ついてくれる?」
「え?洗面台に?」
何をも疑わない瞳がこちらを確認し、訳がわからないままでも黙って俺の指示通りに体を動かす。
「そう。こっちにお尻向けて」
「こう?」
「うん」
そんな、無垢で綺麗な彼女を追いつめたい。
・・・欲望の赴くままに。
大和は鞠の後ろに立ち覆いかぶさるようにすると、両手でバスロープの胸元をがばっと開いた。
鏡の前で二つの白い膨らみがあらわになる。
「や、やまと…?!」
「動くなよ」
どんなことをしても、俺を選ぶのだと確信したい。
そして・・・
バスローブの裾をがばり、とめくり上げる。
何も身につけていない下半身をさらされた鞠は「いやっ!」としゃがもうとしたが「だめ、そのまま」とその動きをおさえた。
一瞬、俺の言葉通り動きを止める鞠。
その隙に濡れているかを確認し、腰に巻いたバスタオルをとって自身の先をあてがうと一気に挿入した。
ずずず・・・とためらいもなく大和の自身が鞠の中にのめりこんでいく。
――・・・声が枯れるほど、狂わせたい。
「あぁ・・・・っ!…やぁん・・・っ」
突然の挿入に背筋を反らせ抵抗する鞠。
目の前の鏡に映る、感じている自分を見ないように目を背ける。
それでも大和の自身は全て、まるで元々がそこにあったかのように収まった。
「・・・鞠、鏡見て」
「いや、ぁ・・・」
首を激しくぶんぶん振って拒否している。
その振動が更にこちらの快感を揺さぶるなんて想像もついてないに違いない。
きゅうきゅうと収縮し締め付けられ、変な所に力が入る。足の指先が痺れそうだ。
「…すきだよ、まり・・・」
その刺激に負けないようにゆっくり自身を引き出し、すぐに埋め込み、またゆっくりと引き出す。
挿入するのに十分湿っていたそこは大和の自身をくわえ込み離さない。
腰骨を押さえていた手を乳房に持って行き、脇からそっと持ち上げてみる。
わざと、鏡越しに鞠に見えるように。
胸の先が少し立ち上がっている。指の腹でそっといじってみた。
「やめて、大和・・・やめて・・・」
唇から漏れるのは否定を示す言葉ばかりだが、体は拒否していない。
そのことに安堵する。
「やめていいの?感じてるんじゃないの?」
「こんなのだめぇ・・・」
少しづつ、じっくりと打ち込むスピードを早めていく。
「やぁぁ・・・あぁ・・・。やまと・・・イヤぁ・・・」
隙あらば逃れようともがく身体に、まるで杭のように打ち込まれる俺の自身。
打ち込まれるたびに声を上げくねる背中。
(もう少しだ・・・)
気持ち良くていいんだ、鞠。
そう、言って。感じると、素直に認めて。
「イヤ・・・イヤぁ・・・」
髪を乱し首をぶんぶん振り、どうにかして逃げようとする鞠の腰を強くつかんで、激しく打ちつける。
乾いた音が部屋に響き始めて、そうするとつながっているところはどんどん湿り気を帯びひちゃひちゃといやらしい音をたてはじめる。
「あぁぁ・・・んぁ・・・あぁん・・・っ!」
鞠は洗面台に顔をつっぷして堪え、それでも最初よりも大きく喘いでいる。
激しくもがいているうちにバスローブは肩がはだけ、細い首筋や背中が露わになっていた。
ますます駆り立てられる、黒い欲望。
「あぁん・・・やぁっ、やぁ・・・」
「すげぇ濡れてる。かわいいよ・・・俺だけの・・・」
「やぁだぁ・・・いやぁ・・・あぁ・・・」
「俺のものだ・・・」
「いやぁぁ、ぁあっ…あぁぁっ!」
先が奥のほうへと当たるのを意識しながら激しく突くと、更に大きい声が上がる。
「くっ・・・」
その獣のような声に触発され、俺はあっけないほど早く絶頂を迎えた。
「あぁ・・・はぁ・・・」
排出した後も、背筋から腰にかけてジリジリと快感が昇ってくる。
鞠は洗面台につっぷしたまま動かない。バスローブの裾を元に戻した。
「鞠・・・」
呼びかけて髪に触れると、鞠は「いやっ!」と言ってその手を払いのけた。
「あっち行ってっ!」
「・・・・まり」
鞠は顔を伏せたまま、泣いていた。
一瞬だけ上げられた顔。
そこに涙が流れた後が既に幾筋かあることに気付き、ようやく俺は自分がしたことの重大さに気がついた。
(・・・しまった、やりすぎた・・・)
ついさっきまで放出した瞬間の恍惚に酔っていた頭ががらりと後悔の色に変わる。
「ごめんっ。本当に、ごめん!」
クスン、クスン・・・すすり泣く声がする。
「一緒に風呂入ったら、思った以上に興奮しちゃって・・・」
「・・・」
「鞠、すげーエロい顔するから・・・」
「してないっ!」
素直すぎるほど思ったままを口にした俺に、鞠は俯いたまま叫んでその場にしゃがみこんでしまった。
「…なんで、こんなこと…イヤって、嫌だって言ったのに」
はだけたままのバスローブ。背骨が浮き出た細めの背中。止まらない涙を何度も指で拭っている。
初めてのときだってここまで泣いたりはしてなかった。
涙すら愛おしくて、俺の中の全てが鞠で埋められてしまうほどだった。だけど今は…。
「もっと俺のものに、したくなった」
「…」
「今だってもちろん俺のものなのは分かってる、だけど…っ」
悪気があったわけじゃない。
俺の中の思いは、最初の頃と何一つ変化はない。サイズがデカくなってて、自分でも処理できなくなってるだけなんだ。
だから、それを鞠にどうにかして欲しかった、だけなんだ。
「もの…」
俯いたまま鞠が呟いた。少しの沈黙。
それから冷たい脱衣所の床から抜け出すように、そろりと立ち上がる。
いつもは優しく微笑んでいるだけの顔に、怒りの感情が浮き上がっていた。
「わたし、は。"もの"…じゃないっ!!!」
(あ……)
「大和のこと、大好きだよ?大和のこと、彼氏だっていうの、すごく自慢だよ?だけど大和が言う"俺のもの"って、そういうことじゃないでしょう??」
「……」
「私はっ、わたしは…」
言いながらまた瞳に大粒の涙が浮かぶ。
「ごめんっ、鞠、ごめん…ほんとに」
「いやっ大和、もう来ないでっ」
「ほんとに、ほんとに俺ただ、ごめんっ…鞠、ごめんっ!」
近づこうとした俺を、突き飛ばすようにして部屋へ逃げる。
追いかける俺。
風呂場から部屋までの大したことのないその距離が、遠くてもどかしいものにしか感じられない。
「鞠、本当に、ごめん・・・」
俺はもう。
ソファに突っ伏して泣いている鞠の、頑なに俺を拒む背中と肩。
横に座ることも出来ない。
(鞠が…)
鞠が、俺から遠ざかっていく。
一番恐れていたはずの彼女との別れ、それが眼前に立ちふさがっている。
鞠を、失ったら。俺はもう。
考えるだけで想像するそれだけで、真っ黒な闇が俺の思考を包み込んだ。
怖くて怖くて…たまらなかった。
(お願いだ、鞠。それだけは…)
短かかったのか長かったのか。
真っ暗闇の感情に埋もれた俺を救ったのは、俺の名前を呼ぶ鞠の声だった。
「やまと…泣かないで」
「え…」
柔らかい指先が目元を撫でた。
「げっ、俺…」
鞠に嫌われて、鞠と別れることを想像しただけで、俺は突っ立ったまま泣いていた。らしい。
マジかよ…。
(格好、悪すぎるだろ…)
涙を拭きとってくれていた鞠の手を取って、そこから外した。
「もう、いいぞ。鞠」
「え?」
「こんなどうしようもねぇ男、捨てちゃって、いいぞ」
「…」
「嫉妬しては襲って、好きだって言っては傷つけて。おまけに別れること妄想しただけでぼろぼろ泣いちまって。しょうもねぇ奴過ぎるだろ」
こっ恥ずかしすぎて、情けなすぎて、どうしようもなくて居たたまれない。
じっと、心配そうに真っ直ぐこちらを見詰めてくる鞠を避けるように顔をそむけた。
(ってこれじゃ反抗期のガキと変わらねぇじゃん…)
けれどそれ以上、何の手だても言い訳も調子のいいことも出て来やしない。
ますます自己嫌悪に陥るばかりだ。
「大和、こっち、向いて?」
「・・・」
促すように名前を呼ばれて渋々彼女のほうを向くと、ふわりと鞠が微笑んだ。
(え、笑った…?)
「大和のこと、捨てたりなんかしない。しょうもないなんて、思わない」
「…」
目の淵がまだ、赤い。
なのにそんな優しい顔で俺を見れる鞠が、ただ眩しく感じる。
「でも力づくはもうやめて・・・。何も言わないで急にするのも、やめて」
「……うん」
ぎゅ、っと俺の身体に廻される柔らかい腕。
自分が裸のままだったことをようやく思い出す。
「怖かった・・よ。怖いのはもうイヤって言ったのに」
「・・・すん、ません」
俺の全てを包むように、暖かい手のひらが頬を撫でる。
たったそれだけで。
俺ん中の、多分どうしようもない黒いもん、がぱらぱらと崩れていった。
「…せい、ぎょ」
「うん」
「制御、不能なくらい。鞠が好きなんだ」
「…うん」
「こんな気持ち、に。なったことないから。どうしていいのか、わかんねぇんだ」
後に残ったのは、言葉にするのももどかしいような甘くて強い感情だけだった。
何言ってんだ俺は、という気持ちと。
肩の荷物を一つ降ろしたような感覚。
――…うん、分かったよ、大丈夫。
風呂上がりの子供みてぇに裸で突っ立ったままの、そんな俺を慰めるように鞠はそう言った。
「嬉しいけど、制御はしてほしい、かな?」
「…頑張ります」
俺がそう言うと。ようやく花のような笑顔を見せてくれる。
その顔はやはり出会った頃よりも数段、キレイだった。