「え〜、そんなに会ってないの?」
「うん、本当に忙しいらしくて」
「えー!さみしくない??」
ある日。
リョウコちゃんとミーちゃんと3人で、鞠の家の近くにある居酒屋でご飯を食べていた。
しばらく彼氏がいない、というリョウコちゃんは鞠の「2週間くらいマトモに会ってないかも・・・」というセリフに瞳を丸くして怒った。
「浮気してない?不安じゃない??」
『毎晩ラブコール、メールは即返信なかったら浮気!これ当たり前だしっ』と言い放つリョウコちゃんに、ミーちゃんが首を振る。
「それはないわぁ。大和くんのラブラブっぷりはすごかったじゃん、覚えてるでしょ?」
「けどさぁ〜、そんなに会えないのはイヤだよね〜〜!」
「うん…でも、仕方ないかなって」
大和はこのところ、急激に忙しくなっていた。
バイトも辞めて、ひたすら研究室で論文を仕上げているらしい。
大学の研究室は鞠には想像がつかない世界で、大和が何をしているかはちゃんと理解できていない。
けれど地元に就職も決め、あとは研究生の生活を無事に終わらせれば。
『もーちょっとしたら、自由だし。まぁ社会人が自由かどうかは分からんけど』
仕送りではなくて、自分が働いてお給料をもらう生活に早くなりたい。
そうすれば、もっと鞠をいろんなところに連れていけるから。
『今みてぇに金なくて部屋でゴロゴロ〜、ばっかじゃつまんないだろ?』
鞠は大和がいればちっともつまらなくはない、けれど大和はどうしてもそれが申し訳ないと思うようだった。
「えらいなぁ〜!私だったら速攻別れちゃいそう〜」
女三人で恋愛の話で盛り上がっていたところに、ブルーチーズがテーブルに届いた。
「わ〜い、飲も飲も♪私おかわり〜!」
「あ、私も」
ミーちゃんとリョウコちゃんはワインを注文し、鞠はグレープフルーツジュースを頼んだ。
「ブルーチーズって美味しいよね〜。クセになる!」
「うん」
返事をしてブルーチーズを口に運ぼうとした瞬間臭いが鼻につき、吐き気がした。
口を手で押さえて戻しそうになるのを堪え、手が滑って手に持っていたフランスパンを落としカシャン!と大きな音を立ててしまう。
周囲の客が一斉に鞠のほうを向く。
「大丈夫っ?」
リョウコちゃんが鞠の背中をなでてくれる。
「ありゃ〜〜、苦手だった?」
「う、ううん、大丈夫。リョウコちゃんありがと。もう平気」
それでも、その後はその臭いが鼻につき何を食べても気持ち悪くなってしまった。
(おかしいな・・・前に食べたときはそんなでもなかったのに・・・)
「鞠、最近生理きてる?」
「ううん・・・多分、お正月からずっと仕事忙しかったからだと思うんだけど」
「そうねぇすぐズレるから、鞠は。あんまりこないようなら病院行きなさいよ。いつかはお嫁にもらっていただくんだから」
大和の訪問以降、家では大和はすっかり婚約者扱いだった。
反対の態度を取りつつもそんなことを言う母親に「そんなのまだ先だよ」とだけ言って鞠は部屋に戻り、昔使っていた教科書と参考書を開いて勉強をはじめた。
専門学校に願書を出してしばらくしたころ、家に電話がかかってきて
「中学を卒業してしばらくたっていらっしゃるようなので、一応軽く学科試験をさせてください」
と言われたので、その試験のための勉強だ。
やはり5年ぶりの学校の勉強は取り戻すのが大変で、時々分からなくなることがあって困る。
(大和・・・忙しいかな)
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大和、勉強でわからないとこがあって。電話してもいい? |