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鞠 12

初めて会った篠塚くんという人は鞠を見て「お人形さんみてー!」と叫んだ。
ヒカルくんは本当に何もなかったように「久しぶり」と言って笑ってくれた。
鞠は心底ホッとして、何事もなかったように飲み会はスタートした。

大和が篠塚くんをすごくからかったり、恋愛の相談に乗ったりしているのが面白くて鞠はずっと笑っていた。
それを黙って聞きながら焼酎のロックを飲み、大和がいきすぎたことを言うとさりげなく訂正しているヒカルくん。
初めて味わう賑やかな雰囲気が楽しくて、ミーちゃんに勧められるままいろんなカクテルを飲んだ。

(なんだか、体がふわふわしていい気分・・・。でも、ちょっと気持ち悪いな・・・)

トイレに行って少し吐き、ドアを開けて外に出ようとしたら次の人が急に入ってきて、 すみません、と避けたところでフラッとして足の力が抜けて、へなへな・・・と床にへたり込んでしまった。
それに気がついた店員さんが「大丈夫ですか?」と聞いて近寄ってくるより先に、大和が

「何してんだよ!」

と駆け寄ってきてくれて、支え起こしてくれたところまでは覚えていたのだが・・・




気がつくと、布団の中にいた。
見覚えのある天井。ここは・・・大和の部屋だ。

そして目の前に、カタカタと音を立ててノートパソコンに向かっているTシャツの背中が見える。
かけられていた淡いグリーンのタオルケットから手を伸ばしてその背中に触れると、ギクッ!と肩が動いて大和が振り返った。
心配そうな顔。

「起きたか?気分は?」
「・・・大丈夫」
「水飲め」

そういって差し出されたエビアンを受け取ると、起き上がって一口飲んだ。
吸い込まれるようにふたくち、みくち・・・と喉を通り過ぎていくのが気持ちいい。
すごく美味しく感じる。とてもノドが渇いてたみたいだ。

テレビもついていなくてシン・・・としている中、大和のキーを叩く音だけが部屋に響いた。
時計が近くになくても分かる、門限は遥かに越えている雰囲気。

「大和・・・今、何時?」
「夜の1時。あ、家は大丈夫だぞ。ミーちゃんのところに泊まってることにしてもらったから」
「えっ?」

大和が言うのには。
ミーちゃんが、この状態で鞠を家に帰したら大目玉を食らうだろうといって、自分が同じレンタルショップで働いてる友達ということにして。
『家で呑んでたら彼女が寝てしまったので、今日はこのまま家に泊まってもらって、明日は一緒にバイトに行きます』
と言ってくれたことを。

「親にきっと聞かれるだろうから合わせてうまく話しておくんだよ〜、ってさ。後でミーちゃんに謝っておけよ。
 お前の親に相当怒られたみたいで、「鞠ちゃんのお母さん怖ぁい!」って言ってたから」
「・・・うん、ごめん。ヒカルくんたちは?」
「あの後まだ呑んでたみたいで、俺が一回大学帰ったときはまだいなかったな」
「そっか・・・ごめんなさい。悪いことしちゃったよね・・・」
「気にすんなよ。自分がどんだけ飲めるタイプか分かったんだからそんでいいじゃん」

ぽんぽん、と頭を撫でられる。

「それよりシャワー浴びてきたら?」
「うん・・・。でも、着替えがないし」
「あ〜〜、買ってくるか?立てるか?」




コンビニに連れて行ってもらい、必要そうなものを見繕う。

(ジーパンと制服、ロッカーに置きっぱなしにしておいてよかった・・・)

「シャワー浴びたらスッキリすんぞ」

そう言われ押し込まれたバスルームは元々家族用だった、というだけあって一人で入るには充分すぎる大きさ。
髪の毛をほどき、きゅ、と蛇口をひねると頭からほどよく熱い湯がかかる。
小さな容器からシャンプーを手に取り、髪を洗い、泡を流すと確かに少しだけすっきりしたような気がした。

「ふぅ・・・・」

軽く汗を流した程度で脱衣所に戻り置かれてあるバスタオルをみると、かすかに茶色い大きめのシミが残っている。

(やだこれ・・・この間の)

でも借りたものだし文句言えないや、と仕方なくそれで髪を拭いていると突然大和が入ってきた。

「きゃっ!」

思わず体を隠す。
鞠の高い声に驚いて一瞬だけ動きを止めた大和が、胸元を隠している私を見てにやっと笑った。

「これ、Tシャツと短パン。でかいけど、だいじょぶだろ」
「・・・うん」
「まぁそのままで来てもらって全然かまわないけど?」

と恥ずかしがっている私の顔を覗きこみ、からかうように頬をつついてから、去っていった。

(そう、だよね。Hしてるんだし、今さら隠すことなんてないんだよね・・・)

とはいえやっぱり裸では出にくくて、買ってきた下着を身につけTシャツを着て短パンをはいた。
大和の、ぶかぶかの短パン。紐をしめれば穿けるけど、大きすぎて下着が見えそう・・・。

脱衣所を出てヒカルくんの部屋の、アチコチに散らばっているものを避けながら大和の部屋に戻る。

「ありがと・・・」

ノートパソコンに向かっている横顔に声をかけると、大和は「おー」と返事をしながら振り向いて、 何故か脱衣所のときと同じ顔をしてニヤリ、と笑った。

「ドライヤー使うか?こっちにあるぞ」
「うん」

その笑みが気になりながらも、指先で示された壁に立てかけられただけの簡素な鏡の前に座り、ドライヤーを手に取った。
そして何気なく聞いてみる。

「ね。大和って普段メガネなの?」
「あ?あぁ、鞠が寝てる間俺もシャワー浴びてコンタクト外したからな」
「そうなんだ」
「似合う?」
「なんかいつもと雰囲気違って、ドキドキする」

黒のプラスチックのスクエア型のメガネをかけた大和は、いかにも大学生らしい感じがした。
髪もセットされていなくて、なんだかいつもより幼くて無防備で、新鮮。

髪を乾かした後も、まだ少しお酒が残っているせいで、頭がまだ少しぼんやりしてる。
そんなままで見つめていると大和は少し照れたように

「あ〜〜〜、もう寝るかな〜」

とノートパソコンを閉じて、置いていた机ごと部屋の脇に押しやった。
そうしたあとで、よいしょ、といって背中のほうから抱きついてきた。

「もうめちゃくちゃにしてもいいよな〜?」

ふざけたようにそう言って、耳にキスをしてきた。きゅん、と心にまでその刺激が伝わってくる。
それに触発されたように、そっと聞いてみた。

「めちゃくちゃって・・・どうするの?」
「ん〜?気になる?」
「うん・・・」
「服、脱いで」

どうしても小さい声しか出ない。
それでも返事をすると急に大和は鞠を抱きしめていた腕を緩め体を離し、ベッドに腰掛けた。

脱いで・・・って、目の前で?
心臓がドキドキと跳ねまわり緊張したけれどそれでも言われるがまま、さっき着たばかりのTシャツや短パンを脱いだ。
下着も?と聞くとうん、と頷かれたのでそれも外した。

生まれたままの姿で大和の前に立った。
火が出るような恥ずかしさだ。

大和はただしばらく、じぃっとそんな鞠の様子を見ていた。
そして

「う〜ん・・・どうしようかな。いざしようってなると、どうしていいかわかんないもんだな」

と言って鞠の手を握った。


それからは、あまりにも恥ずかしいことばかりで、思い出すだけで頬が熱くなる。

大和に四つんばいにされて・・・・・後ろから指で愛撫された。
恥ずかしいのと気持ちいいので我を忘れそうになると手を止めてじらされて、私が"もっと欲しい"と言うまで続きをはじめようとしなかった。
小さな声で指を求める私を大和は嬉しそうに眺めていた。

「いやぁ・・・やぁ・・・もう、だめだよぉ・・・」

イク、という感覚はまだよく分からなかったけれど、なんだかもう、じゅうぶんにそれを体験したような気がしている。
狂ったように吠えて大和の愛撫に答えているとまず腕に力が入らなくなり、お尻だけを突き出す格好になった。
それから感じすぎて膝がガクガク震えだして・・・・とうとう耐え切れずに大和の指を自分の中から抜き取った。
そして最後は、大和のが・・・・。大和の動きに、私はずっと乱されっぱなしで。

「どんどんHになっちゃう・・・」

終わったあとそういったら大和は「大歓迎!」と笑った。
次の日、まだ眠そうな大和にバイトに送ってもらって、仕事をしながら昨日のことを思い出しては1人で縮こまって顔を熱くしていた。



「鞠ちゃん、お母さん来てるよ」

店長にそう声をかけられるまでそのことばかりぼんやり考えていてお母さんが来たのにちっとも気がつかなかった。
すでに目の前にいたお母さんは少し怒ったような顔だ。

「あぁよかった〜。ちゃんと仕事来てるのね。もう、友達に突然泊らせますっていわれたから心配した」
「ごめんなさい・・・」
「志田さんは?」
「えっ・・・あぁ、今、休憩中だから」

(ミーちゃんて、志田って言うんだ・・・)

「あらそう・・・。店長、いつもすみません。お世話になりまして」

(ミーちゃんの苗字、初めて聞いたな。しだみく・・・。やっぱり可愛い名前だな)

ふっとそんなことを思う間に、母親は店長と話しながら向こうにいってしまった。
よかった・・・うまく、ごまかせたかな。
そして

「今日は帰ってくるわね?今度は泊まる時は最初に言っておいてちょうだい」

と言って帰っていった。

帰り際になってから

「うちに志田なんていないけど?」

と少し非難するように店長に言われた。
嘘をつかれることが何より嫌いだと日ごろから豪語している人だ。
上手くお母さんはごまかせたけれど、店長はちょっとムリかも・・・。マリは素直になることにした。

「す、すみません・・・昨日・・・」
「ウソついて外泊?鞠ちゃんらしくないなぁ。どしたの?」
「お酒を、飲みすぎちゃって・・・」
「ははは、酒に飲まれちゃったかぁ〜。気をつけなきゃあ。でも今度ウソつくときは俺も混ぜてね。合わせるの大変だったよ」
「はい・・・すみません!」

恐縮していると、今度は店長は嬉しそうな表情を浮かべた。

「志田さんは、友達?」
「え・・・?」
「女の子だったってお母さんが言ってたから。あの子に友達が出来てうれしいって言ってたよ」
「あ・・・はい、友達です。昨日一緒にいて」
「そうか、それは本当か。そりゃよかった。大事にしなよ、そうやって友達の親に嘘つくって結構面倒なもんよ?いい子だと思うなぁ」
「はい」
「じゃ、おつかれさん。遊び過ぎないように」

店長はニッと笑って、他のバイトの子に「おぅ、おつかれ!」と言いながら離れていった。


ミーちゃん、昨日、本当にごめんなさい

私ぼ〜っとしてて、ちゃんとお礼も言えなかった・・・。

うちのお母さんにイヤなこと言われなかった?本当に本当にごめんね ☆鞠☆



しばらくして、ミーちゃんから返信があった。


マリちゃ〜ん!生きてた〜!よかったぁぁ

あのあとどうなったか心配だったよー

お酒苦手なんだね。すすめすぎたあたしもいけなかったんだよ、反省・・・

マリちゃんのお父さんとお母さん、すっごい怒ってて怖かったけど、大丈夫だよ

私に、友達になってくれてありがとうって言ってたまたお泊りしたいときは私の名前使えばいいからね

今度マリちゃんにも遊びに行きたいなぁ〜。火曜日がお休みだったよね?お昼おじゃましてもいい?

それより大和くんだよ!ずっと鞠ちゃんのこと支えてて、すごい優しかったよかっこよかったなぁ

愛されてるねぇ〜〜。ウチの彼氏ではあんだけしてくんないと思うな〜うらやましーーーー!!

また、懲りずにいつでも飲みにきてね!

みく



(もしかしたら、一番迷惑かけちゃったのは大和・・・?)


でも、ミーちゃんにもすごく迷惑かけちゃった・・・今度は気をつけます

いいよ!お昼遊びに来て!来るときにちょうだい ☆鞠☆

 

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