…以下、R18表現があります…
資料を取りに戻ったら、部屋の前に女の子が座り込んでサンドイッチを食べていた。
お尻くらいまですっぽり隠れる白のパーカーに、淡いパープルのインナーを着た横顔。
「・・・仲山さん?」
急に呼びかけられビックリした顔をしてこちらを見る瞳と、何かが塗られているらしい、艶めいて淡いピンクに光る唇に。
ここのところの忙しさにすっかり抜け落ちていた数ヶ月前の記憶が蘇ってきた。
「あっ・・・ヒカ・・・青木くん!」
いつも大和がヒカルと言うからだろう、慌てて言い直すので、
「ヒカルでいいよ、何してるの?大和待ち?」
と聞くと、「うん、遅くなるって・・・」と少し寂しそうな顔をした。
「あぁ、そういえば教授に捕まってたかもなぁ」
「え、また?」
「うん、また」
また?と聞く彼女がおかしくて、思わず笑ってしまった。
あいつは提出レポートがいつもギリギリの中のギリギリなんで、すぐつかまって小言を言われる。
なので「あいつ懲りないから」と言うと、仲山さんもにっこり笑った。
その笑顔が数ヶ月前に会ったときより輝いて見えてドキマギして目を反らし、すぐに部屋に入ってもらうようにした。
よく考えたら大和に用があるんだから大和の部屋にいてもらえばよかったのだけど、
動揺していた俺は自分の部屋の座布団の埃をはたいて彼女に勧めていた。
彼女は素直に座ってくれた。
そして、何か話さなきゃ・・・と焦り、あんな風にご飯を食べて待っている仲山さんがすこし可哀想に思えたので、
大和から合鍵をもらったほうがいい、と言うと彼女は「ヒカルくんは優しいね」とまたニッコリした。
(そんなこと言われたら、またそっちを見れなくなるじゃないか)
適当に相槌を打ちながら資料を探すふりをしてやりすごしていると、話の途中に
「あ、"王家の紋章"!」
彼女が部屋に落ちているマンガを見つけた。
そこで、いろいろ話をしてみると仲山さんもマンガにかなり詳しい!
嬉しくなってお互い知っているマンガの話をしあい、すっかり俺は緊張が解けて口が緩んだ。
彼女は自分の話もちゃんとするけれどこっちの話を聞くときは素直で、絶対に途中で話を遮ったりしない。
ついついいつもよりしゃべりすぎてしまい、研究室に戻るのを忘れかけていると、そこに大和がぜーぜーいいながら戻ってきた。
「あ〜、普段座って実験ばっかだとチャリ爆走もきっつー!・・・お前ら何盛り上がってんの?」
彼女が大和に、俺と好きなマンガの話をしてたこと、今度貸し借りの約束もしたのだと言っている。
その表情は俺といたときよりも数倍嬉しそうで。・・・嬉しそうなのに、大和はなんだかブスっとしだした。
(妬いてるな・・・大和と話してるときのほうがむちゃくちゃ嬉しそうな顔してるって言うのに)
でもそれに気がつくことなく、彼女はニコニコして大和に今日バイトであったことを話している。
これは俺は相当邪魔かもしれない、と思い慌ててその場を退散した。
研究室に戻り、持ってきた資料をチェックしながらどこを論文にうまく使うか考えていると、
追加でまた持ってきたほうが説明しやすい、ということが分かった。
というより慌てて出てきてしまったので、ところどころポイントになる資料が抜け落ちてしまっている。
(もう、ケンカして仲直りしたころかな・・・?)
二人でビデオを見るって話だったから、きっとそっと帰れば分からないだろう。
しかしこんなこと考えなきゃいけないのもあのとき以来だな。
実はあのとき以来部屋に忘れ物をしないように、邪魔をしないように少し気を使っていたのだ。
研究室を出て、さっき彼女と話していた貸す予定の漫画を2冊抱えてまたもや部屋に戻った。
部屋のドアの前に立ち、そっとドアを開ける。
奥の部屋のふすまが閉じていて、かすかだがテレビの音が聞こえるのを確認して。
ほっと安心し中に入って資料を探そうとしたら、奥から
「ぃたっ!!いやぁーー!」
悲鳴が聞こえ、ビタッ!と動きが止まってしまった。
ギシギシとベッドがきしむ音がし、奥からは「あぁ!・・・だめ、痛いよやまと!」という声が聞こえてくる。
一気に血の気が引いた。
これは、ヤバいときに来てしまった。・・・早く、この場を立ち去らなくては。
そう思う、のに俺の足はまったく動かない。
耳は、ベッドのきしむ音の合間合間をぬって聞こえる彼女の「やめて・・・いや・・・」という悲鳴を追っている。
(嫌がってるのに無理にしてるのか?)
いくら俺と楽しそうに話してるのが妬けたからってそこまですることないだろう。
しかも仲山さんは完全に大和のほうしか向いていないのに。
大和の、我を通す強引なところはよく知っている。だがそれは友情の範囲内でのことだ。
こんなの、仲山さんが可哀想過ぎる。
俺は大和なら、と思って気持ちを抑えていたのに・・・。
俺の中にふつふつと大和に対する嫌悪感が沸いてくる。
かと言ってこの間のように助けるようなこともできない。
ただ立ち去ることも出来ず、盗み聞きしているだけの自分を恥じた。
すると少しづつ、奥の部屋から聞こえる悲鳴が喘ぎに変わっていった。
「ぁ・・・ぁ・・・ん・・・」
小さく微かに、でもギシギシという音の合間をぬってそれは甘く、淡かった。
けれど、ヒカルは動けない。
体が何か堅いものに押し付けられ、縛られてしまったかのようだ。
何か問いかけられ、それに何か答える声。
それから、大和が何かを言う声が聞こえ、ベッドのきしむ音がまた激しくなり。
「・・・・・・すき・・・大和、好きぃ・・・ぁあ」
完全に我を忘れた、甘い嬌声。
ピキーンと心に電流のように痛く切なく響く声。
そのとたん持っているマンガを落としたが拾うこともできずに部屋から飛び出した。
(大和、好きぃ・・・ぁあん!)
頭の中でリフレインして止まらないその声を、俺は、どうしても振り切ることが出来ない。
自転車に乗って無我夢中で大学に戻り、この間大和が携帯を落としたトイレにこもった。
頭を抱え、声を振り払おうとしても、その声は脳みそにこびりついたように俺から離れない。
甘く淡く聞こえたあえぎ声も、今リフレインして止まらないこの声もすべて、すべて、彼女が快感から漏らした声・・・
(仲山さん・・・)
さっきまで、普通にニコニコしてヒカルと話していた彼女が。
直前までは痛い、やめてくれと悲鳴まで上げていたのに・・・
どんな表情なんだろう。どんな目で大和を見て、そう言ったんだろう。
想像すればするほど、心が痛くてたまらない。
なのに俺はいつの間にかジッパーを下ろしトランクスの割れ目から、自分の自身を取り出していた。
キリキリと痛くなるくらいそれは膨張していて、とてもすぐにはおさまりそうにないほど堅くなっている。
無我夢中で、それを擦りあげた。
(ごめん・・・でも俺・・・君が好きだ・・・好きなんだ・・・)
心の中で彼女に謝った。そのとたん、白い液体がトイレの白い壁にぶちまかれた・・・。
それから2回、俺は抜いた。
想像の中の、淫らに喘ぐ彼女で・・・。
壁は俺の出した精液でベタベタになり、イカくさい臭いがトイレの個室じゅうに漂っている。
やっと力を失い、いつもの大きさに戻った俺のものは強く擦りすぎたのか少しヒリヒリした。
力なく、ジッパーを上げるのも忘れトイレットペーパーで壁を拭く。
ドロドロした液体がトイレットペーパーを伝って手に絡みつき、ますます情けなく、思った。
(俺なにやってんだ・・・俺、なにやってんだろ・・・)