止まない雨はない。
って、最近流行りのおバカでイケメンの俳優が言ってたんだけど。
自分が苦労したときに、お母さんが手紙でそう書いてくれたんだって。
でもね、私はそんなの信じないの。
だって、欲しい物が手に入らなかったら、雨止んでたって心はどんよりじゃないの。
人の心ってそんなものよ。
カナはそこまで一息に話すと、ふーっ、と大げさなほどのため息をつき、残り少ないジンバックを飲み干した。
ジンとジンジャーエールとライム。
たったそれだけのアイテムで、こんなに甘くて美味しくて堕ちてしまうお酒が出来るなんて、罪よね。
分かったような分からないような、そんなことを呟いてカナは指先でグラスの淵をなぞる。
淵に沿って円を描く爪は、施された化粧とは裏腹に子供のようにまあるく短く切りそろえられている。
止まない雨はないさ。
ずっと晴れてるなんてこともないようにね。
僕がそう言うと、カナは口の端で薄く笑った。
まるで自分が、飛び切り上級のいい女にでもなったように、けれど元来童顔の彼女がそんな風に微笑んでも、まるで嫌味を言うときのそれだ。
じゃあ。
そう言い掛けて急に口を閉ざす。
自分から誘うのはよくない、そう思ったのだろうか。
急に考え込むように口元を軽く押さえ、目線を新しく作られたシャンパンゴールドの液体に注いでいる。
それからやっと、執拗な僕の視線を感じて恥ずかしそうに笑った。
片頬だけに浮かぶえくぼ。
すっかり剥げてしまい唇の両端にしか残されていないグロス。
鉄壁のように黒く塗り固められた睫毛。
そして、無防備な指先。
止まない雨はない。
例え止んでも、濡れても、彼女の中は暖かだろうか。
僕は今夜、欲しいものを手に入れる。







NOVEL TOP