大切にしているの。
だって、眼と眼が合うだけで嬉しいから。
誰にも話さないで、そっと鍵をかけてしまってあるんだ。
"返却日は( 月 日 曜日)になります"
何冊か積まれた貸しだされる本の上にいつものように置くメモ用紙は、例え一冊しか借りていない人にでも必ず渡す。
仕事上の必須アイテム。
図書館の司書。それが私の仕事。
マニュアル通りの、変わりばえのない、でもまぁやりがいのある仕事。
それに…
「すみません、お願いします」
「…はい」
もう、顔を上げなくたって分かるようになった。
低い声。丁寧な口調。差し出された本に添えられた、細い指。
「3冊でよろしいですか?」
「はい」
「こちら、返却日は来週の木曜になります」
メモ用紙のの空いた所に"2月2日 木曜日"と書き入れ、貸しだされていく本の上にそっと乗せる。
その上からそっと、重ねられる指。
見上げると、こちらをじっと見つめる瞳とぶつかった。
「これ、・・・・違いませんか?」
「え?」
「返すのは、この日でしょう?」
背広の胸ポケットからボールペンをスッと抜き取り、メモに何かを書き足した。
"2月14日 PM7"
「この日、でしょう?」
そっと彼が微笑む。一瞬待って、私も微笑む。
「そうでしたね、大変失礼いたしました。では、その日にお願いします」
二人だけの、ヒミツのやり取り。
まだ誰も知らないの。
14日には、返却不要のチョコを無期限で貸し出しさせていただきます…なんて、ね。
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